雫井脩介「つばさものがたり」書評



一体、何回泣いてしまったんだろうと、読後に思いました。随所にほろほろ来る場面が散らばっていて、鼻の奥がつんとしました。犯罪小説の名手がおくる家族小説は、感涙必至です。

主人公の君川小麦(名前の付け方がとても新鮮!)は、ガンの転移に悩まされながらも故郷にケーキ屋を開きます。家族の念願だった開店ですが、甥っ子から「流行らない」と宣告されます。予言通りに店は行き詰まり、小麦の病状も悪化。弱音を吐く小麦に、力を注いだのがその甥っ子と、甥っ子が見えるという天使のレイでした。このままで終わりたくない、という小麦の願いが奇跡を起こします。

いいなあ、この小説。もっと自分も頑張ろうと素直に思えました。小麦の兄の活躍も面白いのです。キャラ設定が抜群に生きているんです。パティシエの現場の大変さもよくわかりました。ガンという病気の非情さが、露に感じます。ひとりの少女が駆け抜けた一生が、丁寧に描かれています。

全国のパティシエを目指す皆さんに読んで欲しい一冊です。



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