まさに時代に沿った長編小説です。確かに問題作であります。作者の「オリンピックの身代金」に継いで読み応えのある一冊です。
小さな田舎町で、中学二年生が転落死しました。事件と事故、そして自殺としても警察による捜査がすすめられたけれど、多感な少年や少女相手の聞き取りによって度々滞ってしまいます。閉鎖的な教育、親のエゴ、警察の権力、マスコミの言い分など、社会は理不尽にできています。また、人の心情は謎に満ちています。少年の死は解明されるのか。
中学生という時期が、人としての成長過程の未熟さであると改めて思い返されました。同級生の顔色をうかがっていたし、自分の殻に閉じこもっていたし、そもそも自分を良く分ていなかったと記憶しています。やはり、そんな中学生を救うのは大人のはずです。
読後感は複雑です。いじめられっ子を不憫に思ったけれど、そうでもない部分も実在するのです。ひとつ言えることは、死んだらダメだということでしょう。まして将来のある子供が死んではいけないのだと思うのです。ほんと、問題作です。